わたしは、ダニエル・ブレイク ― 貧困は放置!

わたしは、ダニエル・ブレイク(2016)をアマゾンプライムで観ました。

俳優

ダニエル・ブレイク(59)・・・デイヴ・ジョーンズ(60)
ケイティ・モーガン・・・ヘイリー・スクワイアーズ(28)

※以下カッコ内は公開時のだいたいの年齢

概略

貧困者を社会から排除するシステムにダニエル・ブレイクが怒ります

感想

この映画はドキュメンタリーっぽく貧困を描いたドラマです。「老い」「貧困」というのは映画の一大テーマになりつつあるなぁと最近よく思います。新自由主義の根幹にある自己責任というものを描いた作品の一つだとも思います。

人間ってたとえば歳をとったら腰が痛くなってきたりするわけです。本当にきつい腰痛だと立ってまともに歩くことができなくなる。でも、病院で腰痛って治療できないんですね。せいぜい痛み止めをするくらい。これが長く続いたら・・・と思うとゾッとしますね。でも老いっていうのはそれが長く続くことなんです。肉体的に今までできていたことができなくなるだけでなく、常に腰が痛いだけでかなり判断力も落ちます。それに老化が加わると判断力は更に落ちる、本当にそういうことが起きるんです。

ダニエル・ブレイクは医者から仕事を止められるぐらいに心臓が悪いです。でもそこそこは動ける。ダニエル・ブレイクは善人なので自分の病状を大げさに言ったりもしないです。「いま心臓が痛い!苦しい!動けない!」って喚けば、多少は違ったかもしれないなって思います。でもそれはしない。正義の人だから。そしてそういう病気かどうかよくわからない人に対して世界は給付金をあげないシステムになっています。

いかに給付金を出さないようにするか?のシステムを成熟した政府は作り上げています。政府に予算がないことももちろん原因の一つです、また本当になんとも無いのに給付金をもらおうとする人に対する防御でもある・・・ニュースがことさら不正受給を取り上げればそれは政府にとってはいいチャンスです。世論を味方に一気に基準を厳しくして給付金の支出を減らすことができます。

ダニエル・ブレイクは本当に普通の人なので、ややこしいことは考えずに普通にしています。でも普通に、正直な人が割を食う事が大いにある。そして優しい彼はそんな自分と同じような境遇の人たちに対して共感し、そういうシステムに対して怒りを感じる。

「何を言ってるんだ自己責任だ、社会保障のシステムはちゃんとしてる!」これが勝者の意見です。「ちゃんと理論的に正しい道を選べない方が悪い!」これも勝者の意見です。そうではないのです、勝者になるか、敗者になるかはほとんど運でしか無いことを勝者は認識していない、想像したことすら無い。そして、正しい道を常に選び続けられるほど、人は賢くない、賢さは運である、そういうことに気づけるか?だと思います。(参考:Google で「貧困と判断力」を検索)

そして「老い」とはギリギリ勝者であった人たちが敗者の側に回る可能性の高い一つの「病」だと思います。

別に役所にいる人が悪いわけでもないんですよね、役所にいる人達は自分たちが責任を負わされないように立ち回る、つまり役所にいる人達に責任を負いかぶせることで、給付金をカットできるシステムを作っているわけです。「よし、できる限り給付しろ、あとから調べろ、俺が責任を取る」なんて上司はいないんです。みんな問題がないようにというのを最優先する。そりゃ仕方ないです、責任を下に下に持っていくことで上の人は損をしたくないわけです。それが自己責任の世界です。

いまのこの自由主義経済というシステムの世界がギリギリに向かっていっている、それを最近私はよく感じます。

私の評価

☆☆☆☆★・・・観ておいて損はない映画だと思います

感想には映画とあまり関係のないことも書きましたが、ドラマとしては「友情」とか「優しさ」とか、「貧困の末に行き着くもの」そういうものも描かれています。マイノリティが手を取り合うのは私は観ていて心地よいです。映画として強いドキドキワクワクとかカタルシスがあるわけじゃないです、でもなんか考える機会が得られる映画で良いと思います。

ファッションと小物

黒人の男性がフレッドペリーのポロシャツ着てますね。これは白人至上主義者のプラウドボーイズが着ていたブランド・・・フレッドペリーはモッズのスタイルでもありましたね。フレッドペリーはプラウドボーイズに着られるのを嫌って彼らが制服としていたポロシャツの販売をやめてしまったという経緯があります。

フレッドペリーのポロシャツ

役所の管理主任男性はポケットの付いたドレスシャツを着ていますね。私はポケットの付いたワイシャツって仕事感が強くて好きです。

ポケット付きのドレスシャツ

気付き

映画の舞台はニューカッスル、イングランド最北端でブリテン島の真ん中くらいなんですね。なんかかなり英語が聞き取りづらい感じがします。調べてみると、アジア人が1割ぐらい住んでる街、言葉が聞き取りづらいのは方言みたいです。Google Map で見るとそんなに田舎ではないみたいですね。

リンク

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