「君たちはどう生きるか」― って本があってね・・・

きみたちはどう生きるか

2年くらい前かな?宮﨑駿さんが、「君たちはどう生きるか」を作成しているという話を聞いて、私は「吉野源三郎(著)羽賀翔一(イラスト)」の方を読みました。こちらは友愛、共同体を説くような作品で、ちょっと説教臭くもあるけれど、良いお話であることは確かです。この社会というシステムの中で自分はそのパーツとしてどういう選択をするのか?という、比較的全体主義的な本でもあります。突き詰めて言えば、ヒトという遺伝子に刻まれた社会性という呪縛からは逃れられない、ならその条件下でいかに視野を空間的にも時間的にも広く持つか?という話だと思います。

さて、こちらの映画の方の「君たちはどう生きるか」ですが、この先程の吉野源三郎さんの本が母の思い出として登場するのです、そしてそこしか関連性は無いと私は思っています。どう生きるか考えて主人公が叔母に対してあの行為に及んだとするのなら、それはちょっとあざといし、なんというかこの作品は深読みせず単なる冒険活劇と考えたほうが実はしっくり来るのではないかなと思っています。

宮﨑駿と「あの世」映画

宮﨑駿さんの作品にはしばしばあの世が登場します。紅の豚でも風立ちぬでも飛行機の墓場のようなものが出てきます。千と千尋の神隠しなんかも舞台は多分あの世なんでしょう。ポニョが連れて行く世界もそんな感じがしますね。となりのトトロはそこまで感じませんが、なーんとなくこの世とあの世の境界線みたいな雰囲気を感じることはあります。

別にこのテーマを選ぶのはよくあることであって私は深い意味はないと思っています。ただ、人類に刻まれたパンガイア神話の一形態を取ることは全世界に向けて作品を作る上で良い選択のように思います。

それどういう意味だと思う?

さて以下にこの映画を見てて、これってどういう意味なんだろ?と思いながら自分はこう処理した、って思ういくつかのことを書いておきます。

異世界に行ってここは地獄と言っているけど?

多分、この世界では人間界の上下があの世と繋がっており、あの世と人間界はループ構造になっているのでしょう。ワラワラは地獄から天に向かって、つまり人間界に向かって行くのでしょう。つまり、天国の上に地獄がある、という作りなのではないでしょうか。

切子に眞人と同じ傷があるのは?

隕石の塔に入ったというストーリー自体が真人の内心を反映した世界だからではないでしょうか?私のイメージだともしこの塔に別の人間が入った場合には別のストーリーが展開されたのではないでしょうか?

世界が滅ぶと人が生まれなくなるのでは?

多分隕石の内部のことを大叔父は世界と呼んでいるのであって、人間界のことではないのでしょう。

鳥ばっかり出てくるのは?

鳥ばっかり出てくるのは世界中にある鳥葬の文化からあの世に住んでいるのは鳥ということなのでしょう。インコは人を喰うというのは人を喰った話ですね、きっとお喋りだからでしょう。ペリカンはキリストの象徴だったりしますが、そういうのは関係無いかな?と私は感じました。

大きなお屋敷は普通玄関はお客様の通るところで普段は使われておらず、住人は勝手口を使うということや、昔は物がなくて砂糖が届いて嬉しい!とか、戦闘機の風防を作る工場を持っていたりとか、幼少期に自作の弓矢を作ったりとか、なかなかノスタルジーに溢れた映画ですね。

私の評価

☆☆☆☆★・・・一般
☆☆☆☆★・・・中年

面白かったです、誰でも楽しめる映画で素晴らしいと思います。ある種の優等生映画で、歳を取ってる方にはノスタルジーも感じさせ、若い人にはそれなりに感じさせるものもあるでしょうし、楽しかったです。

私は実はこの映画を見たときに感じたのが、「この世界の片隅に」で忠実に描写された第2次世界大戦中の普通の人の日常の生活風景、そういったもののお金持ち版も表現したかったのかな?と思いました。なにしろ、風立ちぬではそういったものの描写はあまりされていなかった印象なので。私は火垂るの墓を見たことがないので、あれは宮﨑駿さんではありませんが、一度見てみようと思いました。

宮﨑駿さんの映画はものすごく期待度が高いと思うんですね、常に、「もののけ姫」を要求されてしまう、そういうのは普通は人生に1つ作れれば「ものすごく」いい方で、それは時代の歯車と自分がマッチしたときだったり、いろんなことがあると思うんです。この作品はもののけ姫ではないけれど、見て損はしない良い娯楽映画だと思いますよ。

リンク

IMDb みんなのシネマレビュー