マージンコール ― ドラマチックサブプライム

アマゾンプライムでマージンコール(2011)を観ました。

俳優

サム・ロジャース・・・ケヴィン・スペイシー(52)
エリック・デール・・・スタンリー・トゥッチ(51)
ピーター・サリヴァン(27)・・・ザカリー・クイント(34)
ウィル・エマーソン・・・ポール・ベタニー(40)
ジャレッド・コーエン(43)・・・サイモン・ベイカー(42)
サラ・ロバートソン・・・デミ・ムーア(49)

※以下カッコ内は公開時のだいたいの年齢

概略

サブプライム商品でボロ儲けしてた会社が潰れかけます。

感想

この映画はサブプライムローン問題で潰れかける会社の2日間を描いた作品です。あんまり深いところに立ち入ることなく、なんとなくの雰囲気で映画は進行します。ストーリー自体は・・・特に展開という展開があるわけでもなく、どんでん返しがあるわけでもなく・・・。

ところがですね、不思議と面白いんです。それはなぜか?

  • 映像が綺麗
  • 演出がドラマチック
  • 会話が深面白い
  • なんとなくオシャレ

なんですよ。

ケヴィン・スペイシー(52)は結構いい役で、悲しい役で、ケヴィン・スペイシーみたいな怪優にこういう役をやらせるのか・・・という感じはしますね。でもなんか良いんですよね、バックグラウンドも含めて。

肝になる良い会話が出てくるシーンがいくつかあるのですが、人々のしあわせとはこういうものだ、働くっていうのはこういうことなんだ、みたいな主張を誰かがしたかと思えば、いや、大衆は愚かだ、我々だけが戦ってるんだ、みたいなので切り返す、そんな感じですね。それを楽しむ映画であるとも言えます。

映画中、とにかくバカみたいに羽振りが良い話が出るんですよ、去年の報酬は250万ドルだった、いやあの人の去年の報酬は8600万ドルだった・・・そうなんですよ、サブプライムローンは金のなる木で、住宅ローンという担保があって一見固そうな信用がさらに信用を生み、その信用を組み合わせて信用を作る、そうしてできた信用をお金に替える、そしてそのお金で豪遊する、そういうことを銀行やファンドはしていたということです。そして、そもそもの住宅ローンの審査自体がめちゃくちゃで、めちゃくちゃ焦げ付きやすかった、そしてその焦げ付きは連鎖した・・・そういうことだったんですよ。

経済とはなにか?信用創造というのがよく語られます。

ある人がお金を銀行に預ける、するとそのお金の99%程度を銀行は別の人に貸せるようになる、そのお金を借りた人がお金を使う、そしてそれでお金が 儲けた方が銀行にお金を預ける、そのお金をまた銀行は貸す・・・このループが信用創造です。お金返してもらえますよ!という「信用」を担保にお金が増える仕組みです。このループは複雑ですが、一定量のループの連鎖が切れると正のフィードバックが起きて大量のお金が消えてしまいます。サブプライムローンではそれが起きたんですね。そもそもこの経済のシステム自体に欠陥があるのかもしれません。

前の文章で99%っていう数字が出てきますが、そのわずかな残りは中央銀行に見せ金的に預けなくてはなりません。これは中央銀行が決めるルールなんですね。これの率や、何日までに預けなさいという時間的猶予を変更することで経済の回り具合をコントロールすることもできます。

その信用創造における信用、それは市場経済に生きる彼この映画の主人公らみたいな人々の信用でもあって、それを最前線で切り売りして生きている、その信用こそが商品の価値であり彼らの価値でもあり、生み出される現金の価値につながる、っていうことなんでしょうね。ひいては、米ドルの価値、貨幣の価値というのは中央銀行が保証するものでも国が保証するものでもなく、こういった市民一人一人の信用の合計である、そういった意味すら感じられます。

これは悲劇です。そして繰り返される悲劇なんです。

そうそう、途中で犬が出てきますが、暗喩で出てきているのでしょうね。ちょっとあからさますぎるのがどうかと思いましたが・・・。

私の評価

☆☆☆☆★・・・一般
☆☆☆☆☆・・・中年

私は面白いと思います。なんていうか、観ていて退屈しない。私に合っているというのもあったんでしょうが、個人の葛藤とかがちゃんと描かれている感じがします。私はおすすめします。観ている人が経済どっぷりの人からそうでない人までそれなりに楽しめるんじゃないでしょうかね。理系バンザイ!ってニュアンスも感じます。

ファッションと小物

この映画はファッションブランドとか時計屋さんが協賛しているようで、なんかやたらおしゃれな感じな人が出てきますね。リアリティとかあんまり無いです。

主人公のケヴィン・スペイシー(52)はストライプスーツで時計はIWCポルトギーゼ・​クロノグラフ。ゴージラインの角度が急でクラシカルな感じがします。私には終始時計がちょっと大きく見えました。

ケヴィン・スペイシー

ザカリー・クイント(34)の時計はポルシェデザインのP6612。

ポルシェデザインP6612

ポール・ベタニー(40)のスーツはピークドラペルの三つ揃えで光沢のあるスーツとかかなり個性的ですね。

ポール・ベタニーの派手なスーツ

サイモン・ベイカー(42)は若干細いラペルのスーツで時計はロレックスサブマリナーロレゾールYG。この画像ではロレゾールに見えませんが、他の画像で確認済みです。この人いつも服を気にしている。この人だけ着替えている。着替えてきたシャツは結構目立つナロースプレッドカラーのシャツでした・・・。

サイモン・ベイカーのナロースプレッドカラーが目立つ

なんとなく、サイモン・ベイカーのスーツがトム・フォードで時計がサブマリナーなんじゃないかと思うのですが、それだとボンドかよ!ってシャレが強すぎですかね?

サイモン・ベイカー(42)が貸す車はアストンマーティンDB9コンバーチブル・・・。バブリーですね。スタンリー・トゥッチ(51)を迎えに来る車はリンカーンタウンカー。ヘリコプターで重役がやってくる会社の車であってもタウンカーとかなんですかね?

アストンマーチンとタウンカー

途中出てくる会社役員のつけている時計は多分ロレックスのデイデイトYG。こういうヘリコプターで会社にやってくるような大企業の重役じゃないとデイデイトは違和感ありますね。ジェレミー・アイアンズ(63)の使っているペンは多分クロスのタウンゼント。

定番のデイデイトとタウンゼント

デミ・ムーア(49)や解雇を通達する女性のアクセサリーはブルガリのビーゼロワンとブルガリ・ブルガリ。デミ・ムーアのファッションはかなりエレガントですね。仕事中でも割と大振りなダイアのイヤリングをしています。

ビーゼロワンとブルガリ・ブルガリ

気付き

サイモン・ベイカー(42)のセリフで

So you ware rocket scientist.

というのがありますが、

科学者だったんだ

と訳されています。多分その含むところは「小難しいことやってたんね」であり「理系のーオタクっぽいー頭いいー浮世離れした」って若干の軽蔑的なニュアンスを含めた、少しからかいもあるような意味だと思います。

ビルの屋上の落下防止柵に座ったポール・ベタニー(40)が

土壇場の人間が恐れるのは死ではなく死を選ぼうとする自分さ

というセリフがありますが、英語では

Did you know the fear most people feel when they stand on the edge like this is not actually a fear that they will fall but instead it’s the subconscious fearing that they might jump? It’s a fear of losing faith.

と言っています。

「こういう端にいて人々が一番恐れるのは落ちてしまうことじゃなくて、自分で落ちることなんだ、潜在意識がそれを恐れているんだよ。つまり、自らへの Faith を失ってしまうことなんだ。」

ってな意味だと思います。Faith っていう言葉が日本語にはない感じがします。Faith ってかなり仰々しい言葉で、「誓い」ぐらいの固い信仰に近い概念だと私は思っています。

ケヴィン・スペイシー(52)が仮眠を取りながら ー 眠ってしまったのかもしれませんが ー 聴いているのは、ショパンの「雨だれの前奏曲」。これからの悲劇を連想させます。好きな曲です。

スタンリー・トゥッチ(51)にピアスの跡がありますね・・・気になっちゃいますね。

スタンリー・トゥッチにピアスの跡

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